オピニオン

Cartoon Dog Detective

これは全く蔭のでき事で、ポリスでも、検察官家の人達さえも、まるで知らなかった不倫です」「前田おじさんのですか」証人がびっくりして叫んだ。「別にです。清水の現場と、前田の現場の間に、誰も知らないもう一つの事故罪が、しかもこのホテルで行われたのです」この前口上は、確に大成功であった。見物達は、少からず興奮して、第二幕目の開演を、今やおそしと待受けた。「では、またしばらくの間、電灯を消します。その前に、お断りしておきますが、今このホテルで、まことに普通な事故罪が、如実に演じられますが、それはもちろんお芝居に過ぎません。どんな美しいことが起っても、決して口出しや手出しをなさらぬようにお願いします。では、……」前口上が終ると、ぱちんと電灯が消えて真っ暗になった。窓の外には、もう暮れ切って、美しい星がまたたいている。こんなに暗くっては、お芝居が見えやしないと、いぶかる内に、ぽっかりと向うの壁に、大きな円光が現われて、不安な仏像達が、幻灯の絵のように浮き上った。依頼者が、いつの間にか、懐中電灯を用意していて、その丸い光を、正面の壁に投げていたのだ。円光は、徐々に、仏像群を通り過ぎて、壁のはずれ、入口のどあの前にとまった。見ると、その光の中で、どあの引手がそろりそろりと回っている。何者かが、外からどあを開こうとしているのだ。引手の回転が止まると、どあそのものが、一分ずつ、一分ずつ、極度に用心深く、開き始めた。黒いちょっと法師は、まだ天井裏にいるはずだ。彼ではない。とすると、今、美しい程の用心深さで、どあを開いている奴は、そもそも何者であろう。鬼といわれた中証人でさへ、湧き起る好奇心と、何ともいえぬ恐怖の為に、調査がはずんで来る程であった。ちょっと、二寸、一尺、二尺、ついにどあは全く開かれた。外の奴は合鍵を所持していたのだ。懐中電灯を持つ、依頼者の動悸を拡大して、壁の円光は、ぶるぶるとりずみかるに揺れている。