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ドルトレヒトの新星が五輪代表の救世主となるポテンシャリティ 第五話/全六話)



干拓地で育まれたフットボールの一端



 FCドルトレヒトVSデンボスの日本人対決。この試合の前週、UEFAチャンピオンズリーグ・グループステージとリーグアン、立て続けにパリ・サンジェルマンの試合を見る。昨季バルサで今年はレアル。PSGサポーターの小旗を振る手にも力が漲る。



しかしバルサ戦でのゴールラッシュとは正反対の結末。負傷者続出のレアルを攻めあぐねスコアレス・ドローに。


 その鬱憤を晴らすかのようなサンテティエンヌから奪った怒涛の4得点。この試合で印象に残ったのが、年齢的な衰えを指摘されるズラタン・イブラヒモビッチの一つのプレー。相手プレーヤーがキープしているボールを奪い取ったシーンである。



 アヤックス時代のルイス・スアレスからも似た様なシーンを目にした。オランダでは基本的に3トップの真ん中は守備での貢献を期待されず攻撃に専念させる。イブラヒモビッチもアヤックスユース・コーチ時代のファン・バステンに
「守備でエネルギーを消耗すべきではない」
と助言されている。しかし守備をしない代表格スラタンとはいえあの巨体とリーチが1対1で奪いにこられたら相手も脅えて腰がひける。


【ディ・マリアを観るのはベンフィカ在籍時以来五年ぶり】

 オランダでプレーしたFWはプレスの先鋒としてボールを追い浪費することを嫌うが隙を見せれば瞬間“本気”で奪いにくる。かつてエールステ・ディビジで揉まれた本田圭祐が、アヤックスやPSVのプレーヤーを相手にしても対人の強さを発揮し、その成長に一驚した記憶が甦る。スタミナだけでなく効率性や合理性を重視する。土壌に恵まれず干拓で自ら歴史を切り開いてきた先人達、限られた状況を智恵と努力で打開してきたDNA遺伝子が受け継がれているのかもしれない。



 ドルトレヒトは前半一度は同点に追いつきながら、後半に呆気なく決勝点を奪われた。この日のポゼッション率は60パーセントを越えシュート総数は15本。しかし、6本のアウェーチームに惜敗した。カメラのファインダー越しでもその表情からは怒りと焦燥と無念が読み取れる。しかし試合が終われば切り替えは早い。SBのポジションと指導者やスタッフも含めた現在の環境に際本人は満足し手応えも感じている。



祝ハンガリ―出場。そしてブダペストのスタディオンを思い起こす



 さて2016年の欧州選手権出場国が決定した。オランダかぶれの筆者がオランイェ予選敗退に落ち込んでいるかといえばそうでもない。日韓ワールドカップ予選に比べれば衝撃は少ない。
 寧ろスロバキアの初出場、ハンガリーの40年ぶりのメジャー大会復帰に感動しポーランドを含めた東欧勢の活躍や、予選での強さが本物か試されるオーストリア、近年国内リーグに大物を招いてきたトルコ等興味深いチームが目白押しで下剋上を期待している。
 ユーロ予選、ハンガリー代表を牽引したジュジャーク・バラージュとは以前偶然ブダペストのスタディオンで顔をあわせた事がある。彼がユース時代を過ごしたデブレツェニVSCとの対戦。2012-13シーズンの幕を下げ締め括る試合。




 翌シーズンもMTKブダペストの試合を観戦する。一次予選敗退ながら今季UEFAヨーロッパリーグにもハンガリ―を代表して出場している名門クラブ。


 
 欧州選手権に出場する国のトップリーグでもこんな風景。2010年の経済危機から続く財政赤字累積が原因で、未だ政府はユーロ導入を実現していない。チケットには同国通貨フォリントの文字。
 ジュジャーク・バラージュにオランダの強豪PSVからのオファーが届いたのは2008年。北京五輪出場を前に本田圭佑が名古屋グランパスからVVVに移籍したのもほぼ同時期。記者発表当日後半から出場した本田の目の前でゴールを決めたのがこのジュジャーク。22歳のハンガリー人もまた前週のフェイエノールト戦がエールディビジ初登場。現在はトルコで細貝萌の同僚とあって、来年本大会での活躍で日本のメディアへの露出も増えると断言する。



 もう一都市(街)だけ紹介したい写真はポルトガルのカレガド。2010年4月3日リスボンから北東40キロの街で2部リーグ公式戦の光景。最下位に沈む地元クラブは昇格を争うデポルティーボ・フェイレンセ(三位)に善戦虚しく0-1の惜敗。



 陸上トラックの外には片側だけ、1000は超えるかと思われる座席数のスタンドに100人前後の観客。



 サポーターと呼べる人種は片手の指に収まる。そのスタンドの外で放牧されている羊たちの鳴き声が聞こえそうな距離。これがクリスィアーノ・ロナウドを輩出した国の二部リーグのリアルな姿か。闘いへのモチベーションを高めるにはのどかすぎやしないか。



二部最貧から一部最高のエスタディオへ



 2014-15チャンピオンズリーグ・グループステージが9月16日に開幕。グループCではゼニト・サンクトペテルブルクが数的不利のベンフィカにエスタディオ・ルスで完勝した。得点者はフッキとヴィツェル、共にリーガサグレス(ポルトガル一部)経験者。GKモラエスは相手FWとの接触で一発退場。掲げられたカードではなくその後の映像が筆者には衝撃的なシーンとなった。映し出されたのは見覚えのあるスキンヘッド。羊たちを背にシャッターをきった桜色のユニフォーム、



 パウロ・ロペスがUEFAチャンピオンズリーグの舞台に立っているのだから。ヴィツェルのヘディングシュートを掻き出したが、既にゴールラインを割ったと無情の判定。慌ててPCを検索すると2012年にパウロ・ロペスは古巣に復帰していた。下写真はカレガドVsフェイレンセ前々日のルス。


ヨーロッパリーグベスト4を賭けたリヴァプール戦。

 ポルトガルのリオ五輪世代といえば、東城翔也(1995年11月生)がマリティモBに所属している。同言語圏のブラジルでの暮らしとプレーの経験は大きな財産。五輪代表選考レースに参戦してくる可能性は低くない。

 ドルトレヒトで際を取材する中田徹氏に同席、その後スキポール空港まで車で送って頂き深謝しながらカレガドでの経験を思い出した。



 カレガドの無人駅、バス停もタクシー乗り場もない。アウェーの洗礼には慣れてるとばかり2時間程歩いてエスタディオに。帰りの列車の時間を気にしながら道に迷うわけにはいかないので道中庭で芝を刈る初老の男性に方角を確認する。するとおもむろにガレージへ。エンジンキーを回すと助手席に筆者を座らせた。念仏を唱えるが如くオブリガードを繰り返している間に駅到着。なるほど、相互補助の精神が浸透すれば公共交通機関は必要ないのか。
歩いている最中に車を止めて全く理解できないポルトガル語で話しかけてきた女性も、後から思えばナンパではなかったようだ。

 第三話で人工芝についてふれているが、日本(Jリーグ)の価値観など寄せ付けない過酷な厳しい環境に身を置いで欧州の選手達は凌ぎを削っている。カレガドとリスボンの二つのエスタディオ。二部から一部に昇格しただけで闘うフィールドがここまで激変するポルトガル。日々繰り替えされる競争は活字で表せるほど容易くはないが夢物語でもないことをパウロ・ロペスは証明した。

 そして残酷な一面の裏側に日本では失われつつある素朴な温かみが同居しているのも欧州の魅力である。


次回にて完結(続)

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