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クラブW杯3位決定戦、広島VS広州恒大~堂々と”世界3位”の座を掴み取った”紫”

全世界へ向けて発信した”紫”のサッカー
 今季最高のゲームを披露しての逆転勝利


「アジア最強のビッグクラブ」広州恒大相手にも堂々と逆転勝利した広島。日本サッカーの可能性を世界へ向けて発信し、”世界3位”の座を手にした。 Photo by Getty Images
「アジア最強のビッグクラブ」広州恒大相手にも堂々と逆転勝利した広島。日本サッカーの可能性を世界へ向けて発信し、”世界3位”の座を手にした。 Photo by Getty Images

【FIFAクラブW杯・3位決定戦】
サンフレッチェ広島2―1広州恒大
<得点者>[サンフレッチェ広島]ドウグラス(71,84分)
[広州恒大]パウリーニョ(4分)

”世界3位”へ向けて再びの6人替え
  佐藤・浅野のW先発や若手を抜擢


リバープレート戦から6人の先発メンバーを変更。宮原・丸谷・浅野・茶島は当初はナビスコカップ予選グループのメンバーだったが、この大舞台で先発に抜擢された。
リバープレート戦から6人の先発メンバーを変更。宮原・丸谷・浅野・茶島は当初はナビスコカップ予選グループのメンバーだったが、この大舞台で先発に抜擢された。

 それぞれ準決勝でリバープレートとバルセロナに敗れたアジア勢同士の対決となった3位決定戦。サンフレッチェは準決勝で今大会2枚目の警告を受けて出場停止のDF千葉和彦の代役に宮原和也が入り、ボランチのMF森崎和幸やシャドーのドウグラスといった疲労の色が濃い主力選手も先発を外れた。MF丸谷拓也やFW浅野拓磨など若手が先発に抜擢され、MFミハエル・ミキッチやFW佐藤寿人、DF水本裕貴も先発に復帰するなど、リバープレートとの準決勝から先発メンバーを6人変更。開幕戦のオークランド・シティ戦でもJリーグCS決勝から6人を入れ替え、そこから準々決勝のマゼンべ戦でも6人替え。過密日程の中、森保監督は今大会3度目の”先発6人替え”を決断した。

 対する広州恒大は準決勝のバルセロナ戦で負傷した左SB以外は従来のベストメンバーを揃える布陣。MFパウリーニョを筆頭に、ブラジル代表歴のある選手をセンターライン軸に据えた豪快なメンバーが揃った。ただ1カ所の変更点だったのがFWエウケソンと共に、中国代表の長身FWガオ・リンも先発起用された事。この2人が2トップに入り、普段は1.5列目でプレーするブラジル代表FWリカルド・グラウもトップ下や左サイドに入りながらプレーする超攻撃的布陣でサンフレッチェに挑んで来た。

 決勝のバルセロナVSリバープレートを待つ会場の異様な雰囲気と共に、来季のアジアの覇権を争う意味でも重要な3位決定戦がスタートした。

【マッチレビュー】奇襲で先制許すも
 徐々に対応して決定機を量産した”紫”


開始早々に先制点を挙げた広州MFパウリーニョは準決勝・バルセロナ戦で大怪我を負った左SBゾー・チェンのユニフォームを手にしてゴールを捧げた。広州もまたチームとして1つとなっていた好ゲームだった。 Photo by Getty Images
開始早々に先制点を挙げた広州MFパウリーニョは準決勝・バルセロナ戦で大怪我を負った左SBゾー・チェンのユニフォームを手にしてゴールを捧げた。広州もまたチームとして1つとなっていた好ゲームだった。 Photo by Getty Images

 試合の方はやはりガオ・リンを最前線に起用するなど普段よりも攻撃的に出て来た広州恒大がキックオフから激しく圧力をかけて来る。それに対して千葉が欠場する中でセンターラインに若手選手が多く抜擢されているサンフレッチェの試合運びがバタついた。そして開始早々に試合は動いてしまった。

 4分、広州恒大が左からのショートCKを選択するのに対して対応が遅れたサンフレッチェはファーサイドへのクロスでも競り負け、1度はGK林卓人のセーブで防ぐも、こぼれ球を拾われて最後はMFパウリーニョに押し込まれて先制点を許す。

 先制してからも追加点を狙う意識も高かった広州恒大の攻撃に対して、サンフレッチェは試合を落ち着かせる事にも苦心。何とか追加点を許さずに耐えるのみ、という苦しい試合展開が続いた。

 しかし、さすがにハイペースの試合運びが続いた広州恒大の選手の足が止まり始めると、サンフレッチェの選手も落ち着きを取り戻し、相手が普段よりも攻撃的な布陣で来ているぶん、その穴を活かして反撃に出る。特に相手の左サイドに守備対応が甘いリカルド・グラウが入ったため、対面するミキッチのドリブル突破やクロスでチャンスメイクする事で攻撃に幅とリズムを作っていく。

 すると次第にボールも支配し始めたサンフレッチェはサイド攻撃からエースFW佐藤へラストパスを集めて決定機を量産していく。右サイドからはミキッチが、左サイドからは清水が佐藤へ入れたクロスボールに対して、佐藤のダイビングヘッドがゴールマウスを捉える。しかし、相手GKの好守が続いて同点弾は生まれず。

 前半終了間際には相手陣内でボールを奪い、MF青山敏弘が意表を突くタイミングでエリア内に駆け上がって来たMF丸谷へ絶妙のラストパスを通す。丸谷も飛び出した相手GKを上手く交わす浮かしたシュートを選択したものの、懸命に戻った相手DFがゴールライン上でスーパーブロック。前半追加タイムには浅野の抜け出しからも決定機があった。

 しかし、決定機を量産した前半のサンフレッチェは決めきれず、0-1の1点ビハインドで前半を折り返す。

今季最高のゲーム内容で逆転
 紫が堂々と”世界3位”を掴み取る


2002年の日韓W杯ではブラジル代表を優勝に導いたスコラーリ監督。この試合ではACL準決勝第2レグのガンバ大阪戦のように試合を膠着させようとしたが・・・。 Photo by Getty Images
2002年の日韓W杯ではブラジル代表を優勝に導いたスコラーリ監督。この試合ではACL準決勝第2レグのガンバ大阪戦のように試合を膠着させようとしたが・・・。 Photo by Getty Images

 迎えた後半。ハーフタイムに動いたのはリードしている広州恒大だった。FWエウケソンに替えてACLでも大活躍し、クラブW杯準々決勝のクラブ・アメリカ戦でも貴重な同点弾を挙げたMFジョン・ロンを投入。攻撃過多な編成になって、前半の中頃からはサンフレッチェに崩されていたバランスを修正して来た。その甲斐あって、後半の立ち上がりは打ち合いになっていたこの試合で最も落ち着いた展開が続いた。そのクローズされた流れは、ACL準決勝の第2レグでもガンバ大阪を同じような術中でスコアレスに抑えて決勝進出へ導いた広州恒大のフェリペ・スコラーリ監督の思惑通りだっただろう。

 ただ、広島の森保監督も動いた。58分、動きの落ちたエースFW佐藤に替えて、温存していたFWドウグラスを投入。シャドーで先発していたFW浅野を最前線に据えた。続けて67分には右サイドのミキッチに替えて、CS以降に決定的な仕事を続けているMF柏好文を投入。ボールは持てるようになって来ていたものの、フィニッシュに繋がらない停滞感を打破するための積極的な早い時間帯での決断だった。
途中出場のFWドウグラス(右)が2ゴール。今大会は彼にかかる負担が大きく、心身の疲労を感じさせた。しかし、リーグ21得点の彼の実力が最後に証明された。 Photo by Getty Images
途中出場のFWドウグラス(右)が2ゴール。今大会は彼にかかる負担が大きく、心身の疲労を感じさせた。しかし、リーグ21得点の彼の実力が最後に証明された。 Photo by Getty Images

 するといきなりその効果がスコアを動かす。71分、左CKを獲得すると、MF茶島がニアに蹴ったキックに対して、前で競った水本やその裏の浅野や相手DFの間を抜け、ゴール前でバウンドしたボールに途中出場のFWドウグラスが押し込んでサンフレッチェが同点に追いつく。

 同点にされた広州恒大のスコラーリ監督は何を思ったか?前線で最もボールを収められるFWリカルド・グラウをベンチに下げて守備的MFを投入する消極策に出る。準決勝から中2日で、サンフレッチェよりも休養日が1日少ない事でチーム全体の足が止まっていたのは確かだが、守りに入った相手に対してサンフレッチェは勇敢に攻めた。

 そして遂に84分、投入されてから果敢にドリブルでの局面打開を仕掛け続けていた柏が右サイドを突破。ニアサイドへ入れた早いクロスを浅野がヘッドで合わせたシュートはクロスバーを直撃するも、その跳ね返ったボールを再びドウグラスが押し込んで2-1と逆転のゴールを決める。

 その後、延長戦のない3位決定戦のレギュレーション上、僅かな残り時間に守備の強さを注入したい森保監督は対人能力の高いDF佐々木翔を左サイドに投入。1対1の対応でも競り勝てる選手が揃ったピッチでは、リバープレートのような残り時間を消化する巧みなキープ力も使って試合巧者ぶりまで発揮。

 サンフレッチェが今季のベストマッチと言える内容を最高の舞台で披露し、堂々と世界3位の座を掴み取った。

W杯優勝監督に勝った森保采配
 日本人の可能性を世界へ向けて発信


この日の采配はもちろん、今大会全体を通した森保監督のマネジメントはW杯優勝監督をも上回っていた。 Photo by Getty Images
この日の采配はもちろん、今大会全体を通した森保監督のマネジメントはW杯優勝監督をも上回っていた。 Photo by Getty Images

 確かに準決勝から休養日が1日長かったのはサンフレッチェだった。逆に1日少なかった広州恒大の選手の足が止まったのも必然だったかもしれない。しかし、サンフレッチェは今大会4試合目だった。11日間で4試合目だった。逆に広州恒大は3試合目。サンフレッチェは今月に入ってガンバ大阪との明治安田生命JリーグCS決勝の2試合を含めると6試合目。それも全てがタイトルマッチ級のビッグマッチが続いていたのだ。さらに今大会の開幕戦ではMF野津田岳人とMF柴崎晃誠を負傷で失っていたのだ。

 そんな中、この試合でサンフレッチェの選手が足を止めずに広州恒大の選手がガス欠を起こしたのは、今大会を通して3度も前の試合から先発メンバーを6人変更するなど勇敢な采配を見せた森保監督の管理能力の賜物だろう。

 今大会3試合に先発出場したMF茶島は今季のリーグ戦では3試合(先発1試合、出場時間は122分間のみ)のみの出場だった選手だが、小回りの利く敏捷性を備えた彼のプレースタイルは国際大会では非常に効果的だった。確かに茶島は野津田や柴崎のバックアップに過ぎないかもしれないが、マゼンべやリバープレート、広州恒大のようなフィジカルの強い相手には野津田や柴崎よりも適していた、とは言えるはずだ。

 FW浅野やDF宮原、MF茶島、FW皆川といった今大会で活躍した若手選手たち。彼等は無冠に終わった昨季の中盤戦に青山の負傷離脱や佐藤が采配批判によるベンチ外通告を受けている最中に起用されていた選手だった。種は昨年から蒔かれていたのだ。優秀な若手を輩出し続ける下部組織があるのも前提だが、トップチームでも常に全選手を見てくれている監督がいる。だからこそ、青山は「今のチームは2チーム分の戦力がいる」と言う。だからこそ、激しい競争のある最高の緊張感の中で日々最高のトレーニングが実行できる。

 他クラブからレンタル移籍のオファーを受ける優秀な若手選手も多いが、彼等はJ2でのプレー経験よりも、サンフレッチェでのトレーニング環境を選んで残留する。もしかすると、毎年のように主力選手を流出するのは、その後継者がチーム内にいる事を監督が掌握しているからなのかもしれない。

 そして、この日の3位決定戦で確かだったのは、森保監督はスコラーリ監督に完全に勝っていた。2002年の日韓W杯で母国ブラジル代表を優勝に導き、その後もポルトガル代表の欧州選手権準優勝や、昨年のW杯でも再びブラジル代表を率いてベスト4の実績を残して来た世界的名将を相手に完勝した。この試合は監督力で捥ぎ取った部分が大きかったのだ。

 皆川が「世界を紫に染め上げる」と宣言した「全世界”紫”化計画」は世界制覇とはならなかったが、アジア最高のビッグクラブを飲み込み、世界へ向けてサンフレッチェやJリーグの魅力を大きく発信した。

 Jリーグは、日本人選手は、日本人監督は、世界でも十二分に通用するのだ!!

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コメントコメント

入江 章徳

入江 章徳 

広島の育成がJリーグレベルの中では素晴らしいという前提はあるにせよ、、
たぶん宮原や丸谷を使った挙句に負けていた場合、メディアは広島の選手層の薄さを叩いたでしょうね。笑
でも3決で勝ったから森保監督は色々なところで賞賛されている。
世界大会という環境が選手を伸ばしてくれたのが大きいですが、シーズン土壇場のタイミングで選手が伸びて、森保監督は持ってますね。(^^)
それとも全て監督の実力なんですかね、、?

山本 衆平

山本 衆平 

大胆な策が吉と出ましたね。堂々たる試合でした。今、カープよりよっぽどサンフレッチェの方がおもしろいと思うですけどね・・・。

hirobrown

hirobrown 

入江章徳さん、コメント有難うございます。監督の実力というよりはクラブ全体の勝利だったとは思います。ただ、この試合で強調したいのが、後半の広州恒大の選手の足が止まったのが大会を通した森保采配であった、というのは事実でしょう。4試合で18人が先発し、19人が試合に出場したわけですから。

hirobrown

hirobrown 

山本衆平さん、コメント有難うございます。カープにマツダスタジアムを提供できるのであれば、サンフレッチェにも新スタジアム建設を認可して欲しいですね。

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