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スポーツディレクターが見た世界の中の太田宏介①

〜デビュー戦から振り返る、太田宏介の人間的ポテンシャルとフィテッセというクラブの持つポテンシャル〜

移籍後初の公式戦とは思えない程の落ち着きを見せたデビュー戦 vカンビュール  Photo by Getty Images
移籍後初の公式戦とは思えない程の落ち着きを見せたデビュー戦 vカンビュール Photo by Getty Images

先ず最初に驚かされたのは、徹底したコンディショニング管理。
ここ2年間、日本でリーグ戦に出場し続けた宏介の疲労はかなり蓄積されていた。
しかし、本人は新たな挑戦に対してとても意欲的であった。こんな時に怪我は起こりやすい。

フィテッセでは、毎朝脳波を測っている。
その項目は、持久/パワー&スピード/筋力/コーディネーション&スキルの4つだ。

フィテッセは毎朝選手の脳波を取り、身体と脳のバランスから個別に選手のコンディショニング管理をしている
フィテッセは毎朝選手の脳波を取り、身体と脳のバランスから個別に選手のコンディショニング管理をしている

脳波を測ることにより、身体的に感じている疲労と脳が感じている疲労の両方を測定する。

宏介の身体は疲労しているが、脳が活発な状態にある場合、休まらない部分がでてきてしまう。その休まらない部分が出す信号に気がつかないことにより、フィットした状態と脳が勘違いを起こし怪我につながるのである。
これが、「インジュリーフィット(injury fit)」である。

ピリオダイゼーションのスペシャリストがいるフィテッセのトレーニングは、チームのコンディショニングレベルとインジビィドゥアルのコンディショニングレベルをしっかり融合させている。

全体と個別でトレーニングする意図を明確にすることが大切 Photo by Getty Images
全体と個別でトレーニングする意図を明確にすることが大切 Photo by Getty Images


2年間試合に出場し続けている宏介の最大の敵は「疲労」である。
その疲労をしっかり考慮してくれていることをいくつかのトレーニングから垣間見ることができた。


身体をフレッシュネスに出来ないまま戦い続けたFC東京時代 Photo by Getty Images
身体をフレッシュネスに出来ないまま戦い続けたFC東京時代 Photo by Getty Images

先ずは、FCTと呼ばれるサッカーに特化したコンディショニングトレーニングである。

FCTの前にはスプリントのトレーニングを入れるのが原則なのだが、宏介は別でトレーニング。
FCTが始まると、1本置きにプレーをし、レストを取っている間は立ち止まらないように指示がしっかり出ていた。

注目すべき点は、2つ。

1つ目は、本来合流したばかりの選手に対して、チームの観点から言えば、早くチーム戦術にフィットしてもらいたいと考えるのはごく当たり前だろう。しかし、それよりも優先順位として掲げたのがコンディショニングである。
チームとしての視点を、個人に置き換えることで、その人の背景と現状を比較する客観視能力に長けていることがわかる。

2つ目は、サイドバックというポジションだからこそ、戦術よりもコンディショニングを優先できたのだ。これはサッカーをしている人なら容易に想像が出来ると思うが、サイドバックはゲームを作る弓や弓を引く人ではなく、放たれる矢の部分に属するからだ。そして視野の確保として180度で済む=コミュニケーションも180度分ということからみた判断である。

この2つの意味することは、世界のハイレベルで戦うためには、様々な角度の分析から、あらゆることを想定し、裏付けのある根拠に基づいることが重要ということである。
指導者の主観は過去の経験でしかない。
「俺は昔休みなしで何試合もやっていた、だからお前もできるだろ…」正にカオスでしかない。

11人にそれぞれの違うポジション(役割)があるように、11人いればそれぞれ違うコンディショニングだという前提が成り立つ。
そこには、ロジカルな理由が必要である、根性や気合では、その瞬間は乗り越えられても継続することは不可能である。

チームとして、助っ人補強をした宏介が怪我をした場合、それは誰のせいなのでしょうか。
日本では、未だ怪我は選手のせいだと言いますが、世界は選手の怪我の責任は指導者が追います。
だからこそ、ロジカルな理由が必要なのです。

シーズン開始直後に就任となったマース監督 役割の徹底にとても長けている Photo by Getty Images
シーズン開始直後に就任となったマース監督 役割の徹底にとても長けている Photo by Getty Images


デビュー戦当日、彼は緊張したと言いました。
ただ、この緊張は足が震えるなど、パフォーマンス低下を意味するものではなく、ワクワクやドキドキに近いアドレナリン放出寸前の良い状態を意味します。これをフローやゾーンなどと呼ぶ人もいますが、世界はそんな言葉は使いません。何故なら、サッカーの用語ではないからです。

天皇杯から休む間も無くスペインキャンプに合流し見事90分間戦い抜いた太田宏介 これも徹底的なコンディショニング管理が背景にあったからだ Photo by Getty Images
天皇杯から休む間も無くスペインキャンプに合流し見事90分間戦い抜いた太田宏介 これも徹底的なコンディショニング管理が背景にあったからだ Photo by Getty Images


宏介が、試合に対して非常に良い状態だったのは、不安がなかったからです。

不安とはなんでしょうか。
それは、コンディショニングです。

チーム戦術もそこに必要な技術もコミュニケーションも、初めてのチームでは気にしても意味がないのです。何故なら、初めてだからです。

しかし、コンディショニングだけは別です。
今まで戦い続けてきたからこそ、そこに不安が過るのです。疲れてないか、痛みはないか、違和感はないか…これは怪我をした選手には良く起こる思考のネガティヴ連鎖です。

宏介はそこに不安を抱えませんでした。
これはチームが宏介に合わせたコンディショニングトレーニングをしてくれたことにより、疲労感を一切感じることがなかったからに他なりません。

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コメントコメント

山本 衆平

山本 衆平 

コンディショニングも含めた選手管理、ある意味選手を商品としてプロデュースしていく力は日本に足りないところですよね。勉強になりました!

安彦 考真

安彦 考真 

山本さん、
コメントありがとうございます!
正にそのプロデュース能力が足りていないと思います。指導者は戦術、技術、コンディショニング、思考、コミュニケーション、サッカーの主成分であるこの5つをコントロールしない限り、指導者適性があるとは言えないと思うのです。
引き続き、よろしくお願いします!!

退会済

退会済 

初めまして、くにきちと申します。
全然知らない部分で興味深く読ませて頂きました。

コンディション作りは本当に大事ですよね…。
日本も試合数が多いチームが多いのでしっかりと良いところは参考にしてほしいです。

また楽しみにしています!

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