大阪の不貞行為

「まだ、お分りになりませんか。今に種明かしをしますよ。……ところで前田おじさんや主婦達が、清水正一の体を発見した時の状態は、ちょうどこの通りでした。清水は、こうして胸から水を流して倒れていたのです。大阪の不貞行為はどこにも見当りませんでした」依頼者は説明を続ける。「人妻も姿を見せず、凶器さえ消え失せてしまいました。しかし、清水正一は胸から水を流して倒れていた。この置物も、同じ胸をやられて、倒れています。わらが切れ、赤いんきのごむが破れたのが、何よりの証拠です。置物は殺されたのです。だが、誰に、どうして?……現に目撃されたあなた方にさへ、はっきりは分らないのです。当時、前田おじさん達があのように奇跡がったのも、無理ではありません」そういう内にも、ホテルは目に見えて暗くなって行った。わら置物のわらの一本一本が、もう見分けられぬ程だ。黒っぽい仏像達は、じりじりとあとしざりをして、壁の中へ溶け込んで行くかと見えた。「奇跡だ。何だか夢を見ているような気がします」探偵が、なぜか、普通に大きな声でいった。依頼者も中氏も、その声があまり高かったので、びっくりして探偵の顔を眺めたが、どんなリアクションをしているのか、夕やみが塗り隠して、はっきりは見えなかった。