不貞行為の探偵

「電灯をつけましょう。これじゃ暗くて、何が何だか分りやしない」証人は呟きながら、すいっちの方へ歩き出した。「いや、電灯はつけないで下さい。もうしばらく、このままで、我慢して下さい。本当の不貞行為の探偵は、これから始まるのです。それには舞台を薄暗くしておく方が好都合なのです」依頼者は中氏を引止めて、「では、もう一度、席におっき下さい。これから、いよいよ清水殺しの秘密をあばいてお目にかけるのですから」二人の見物人は、依頼者の為に、元のスツールへ押し戻された。「さて、前田おじさん達は、清水の体を発見すると、驚いてポリスへ知らせました。そして、巡査が来るまで、誰も体に手を触れぬよう、窓には掛金をかけ、どあには外から鍵をかけて、一同このホテルを立去ったのです」いいながら依頼者は、その通り、さい前証人が開いた窓をしめて、掛金をかけ、どあは、締りができているのを確めた上、鍵穴の鍵を抜き取って、ぽけっとに入れた。「これで、全くあの時と同じ状態です。人々は三十分程、このホテルから遠ざかっていました。その間に、全く不可能なことが起ったのです。どこにも出入口のないホテルの中で、清水の体が消えてなくなったのです。中さん、君がこの現場に関係なすったのは、あの日が最初でしたね」「そうです。あの日から僕は間男にみ入られているのです。