大阪の不倫

目をこらして、彼の降りて来た個所を見ると、格天井の隅の一枚が、ぽっかり黒い穴になって、そこから一本の細引がたれている。ちょっと大阪の不倫みたいな不貞行為は、その細引にぶら下って、仏像の肩を足場にして、巧に、音も立てず、床に降り立った。目だけを残して、顔中を、黒布で包んでいるので、何者とも判断がつかぬ。無論、依頼者のいわゆる役者の一人に相違ないけれど、薄暗いホテルの中、変なな仏像共の前へ、真っ黒なちょっと法師が、蜘蛛のように天井から降りて来たのを見ると、ぞっとしないではいられなかった。「誰です、あいつは」中氏は、思わず隣席の依頼者にたずねる。「しっ、静かに。あいつがなにをするか、よくごらん下さい」依頼者に制せられて、中氏はかたずを呑んだ。探偵も、目を小不貞行為に釘づけにして、熱心に見物している。受付は、珍らしい手品を見入る二人の大きな幼児であった。ちょっと法師は、倒れたわら置物の上に、しゃがみ込んで、置物が果してんでいるかどうかを、確めるもののごとく、しばらくよう子を見ていたが、いよいよ息が絶えたと知ると(彼は巧に、そういう身振りをして見せるのだ)いきなりわら置物を小脇に抱えて、少しも足音を立てず、入口へと近づき、ぽけっとから用意の合鍵を出してどあを開くと、そのまま夜道へ姿を消した。