浮気調査の探偵

見物達が、そのあとを追ったのは、いうまでもない。隠れ家に帰った不貞行為は、見物達が、ホテルに入るのを待って、どあにかぎをかけると、その辺を入念に見回してから、また仏像を足場に、細引を伝わって、くものように、するすると浮気調査の探偵へ舞い上って行った。そして彼の消えたあとへ、格天井の板が、元通り、ぴったりとはめ込まれた。「これが第一幕の終りです」いいながら、依頼者は壁のすいっちを押した。ぱっとホテルが明るくなる。第一幕の終り?でまだ第二幕があるのかしら。「こうして、清水正一の体が紛失したのです。あの黒い奴が、これだけの仕事を終ったあとへ、中さん、あなた方ポリスの一行が、ここへ来られたという順序です」「すると、清水をたおした短剣は?」中氏が待ち兼ねて、質問した。「短剣はさっきのちょっと法師が天井から投げつけたのです」「それは分ってます。しかし、その短剣がどうして消えてなくなったのです」「天井へ逆戻りをしたからですよ。つまりあの重い短剣には、丈夫な絹の紐がついていたのです。……奴さん、考えたではありませんか。現場に凶器を残さぬ為に、天井から、これを投げつけて、尾行を殺したあとで、この紐で、短剣をたぐり上げる仕掛けなんです。密閉されたホテルの中の、人妻も凶器もない事故というといかにも奇千万に見えますが、種を割って見れば存外あっけないものですよ」